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NO.5
算 額

夏休みが始まりました。新しい発見をしたり、興味のあることをじっくり調べたりするのに、絶好の機会ですね。いろいろなところで、算数に関係するものも見つかるかもしれません。

毎週火曜日の朝には児童朝会がある。その多くは「○○先生の話」と題するものである。指名された先生は、工夫した話を用意し、子どもを魅きつける。
夏休み前の朝会に「私の夏休み」と題して話をせよ、との連絡である。実は、これを予定していた先生が出張となったので、私に急な指名である。
実際には出来なくてもいいから、なるべく話を大きくして、ぜひこんなことをしてみたいと子どもに披露しろという。そうすれば、子どもたちも長い夏休みに向ってはりきってくれるからというのだ。
私は、調子にのって、さしたる目算もなく“算額”の話をした。
本の中でしか知らず、実際のものは見たこともないのに、休み中に旅行をする機会には、ぜひこれを見つけてみたいと話をした。
すると、話の終わりに、司会者が「これはおもしろい話だから、九月の初めに、見つけたかどうか、もう一度みんなの前で話してもらいましょう。」と言うのである。これにはほとほと閉口した。てっきり言いっぱなしで終わりと思っていたからである。
全国各地の神社・仏閣の中には、その昔“算額”というものが見られた。
いうなれば数学の絵馬である。江戸時代、日本には独自の数学が発展した時期があった。有名な関孝和に代表される研究者たちがたくさんいた頃である。
彼らには研究の発表の場があまりなかった。そこで、難問が解けたり、新しい問題をつくったりすると、それを大きな厚板に書いて、神社や寺に奉納したのである。難問が解けた感謝のしるしでもあり、雑誌や出版の多くあった時代ではないので、研究業績を発表する場でもあったのだろう。
その時代の数学を「和算」と呼んでいるが、世の和算研究者は、この算額を一つの研究の対象にしている。
私はそれまで実物を見たことがなかったので、かねがね一度見てみたいものだと思ってはいた。しかし、この度は是が非でも探さねば格好がつかない。
そこでまず、算数・数学の研究会に出る度に、算額を知っていますかと聞いて歩いた。そんなもの、今時見つかるはずはないだろうと言う人もいる。心細い。
しかたなく一人文献を調べていると、そのうち、群馬県で数学史の国際会議があるから行ってみろと教えてくれる人がいた。また、上野の山に一つあったような気がすると大学の先生。
私は早速かけずりまわる。群馬は桐生、大田。栃木は足利と続けざまに、古い算額にお目にかかった。土地の人の案内で、すいかや麦茶をご馳走になりながら老人に話を聞く。中には寺の経堂にしまってあるのを無理にあけてもらったのもあった。
担任する子どもからの手紙で、おじい様とともに京都の寺社をめぐって探した、九月に資料を持っていくと連絡が入る。また、別の子から、うちの寺に“算子塚”があるという電話ももらう。有難いことだ。
興味がそっちを向いていると、情報が向こうからたくさんとび込んで来る。
九月の朝会にはスライドを何枚も写すことができた。

※7月9日「担任の愉しみ」の「新左衛門先生の面白算数問題」の解説・解答例はこちらからダウンロードしてください。