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NO.9
評 価

人は、子どものころからさまざまな場所で「評価」されます。今回は、一人の子どもの本当の力を見出すために必要な「評価」についてのお話です。

『だいこん』(山本一力著、光文社)という時代小説を楽しく読んだ。本の帯に「直木賞作家の魅力溢れる細腕繁盛記」と記される。江戸の町が舞台。町の人々に心から愛されている一膳飯屋の話。知恵を使い、こころざしを捨てず、ひたむきに汗を流した、つばきという女あるじの生き方である。
話の半ば、店に奉公人を雇い入れる場面がある。つばきの心持ちが気に入った口入屋の番頭は、人定めのコツを教える。
『笑顔がきれいなひと』
『骨惜しみをせず、腰が軽いひと』
『声が明るいひと』
『好き嫌いを言わず、出されたものは残さず食べるひと』
こういう人なら、お店に縁起のよさを運んでくれるという。「出されたものを残さず食べる」というのは、せっかく用意してくれたものに手をつけないと申し訳ないという相手への思いやりなのである。
私は、この四つの教えは人を見るのになかなかいい視点だなと感じた。こんな人になるかならぬか、家庭の躾が大きく左右する。親の価値観がものを言う。
我々教師は、人を見る目を持つことが大切な資質。どんな人間をよしとするかの価値観がしっかりしていなくてはならない。ここに描かれた人定めのコツはきっと作者の価値観の現れでもあろう。
最近になってようやく気付き始めたことがある。子どもを見る目で、最も大切で最も難しいのは、子どもの内に何か見所があり、一見してはなかなか気付かないが、努力を重ねていくうちに、きっと将来芽を出すに違いないだろう子を見出すことだ。そして、そんな子を引き揚げてやることだ。
授業中によく手を挙げていい発言をし、テストが良くできる。ノートがよく書けて申し分がない。こんな子は、誰でもいいと評価するのだ。そして、そんな子は、どこにいってもよく評価される。
そうではない努力型の人間で、大器晩成型の子どもはなかなか評価されない。その力を見出し、その子に活躍の機会を整えられることが教師の腕の見せ所だ。