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NO.12
『漱石先生の手紙』

坪田先生は、実にたくさんの興味深い本をご存知です。いずれも、子どもだけでなく大人にも役に立つ内容です。今回は、明治の文豪・夏目漱石の手紙を取り上げた本についてのお話です。

『漱石先生の手紙』(出久根達郎著、NHK出版)というのを読んだ。以前、NHKの人間講座で放送されたのを見て、出久根達郎氏の人柄と内容の面白さに心をひかれていたのです。それが出版されているのを本屋で見つけ、すぐさま買い込んでゆっくりと読んだのである。
漱石は手紙をたくさん書いた。書くのも貰うのも好きだったらしい。「人から長い手紙をもらうと、よくこんな時間をつぶしてくれたと思う」としばしば人に書き送っていると紹介されていた。
ロンドンから、漱石夫人の弟、倫への手紙に「学問とは何か」について教えている文があった。こんなのである。
「(略)学問が智識を増す丈の道具ではない 性を矯めて真の大丈夫になるのが大主眼である 真の大丈夫とは 自分のことばかり考えないで 人の為 世の為に働くといふ 大な志のある人をいふ 然し 志ばかりあつても何が人の為になるか 日本の現在ではどんな事が急務か 夫々熟考して深思せねば容易に分からない 是が智識の必要なる点である 大丈夫の人格を備へて 又智識より得たる大活眼を有する底の男にならなければ 人に向かつて威張れない よくよく細心に今から其方向へ進行あらん事を希望します 今の内の一挙一動は 皆将来実となつて出てくる 決してゆるかせにしてはいかぬ 人間大体の価値は 十八九 二十位の間にきまる 慎み給え 励み給え(略)」(p.81) 漱石の手紙は句読点が無く、ずっと続いている文なので私が勝手に間を開けたが、ここに何故勉強するのかのヒントがある。
私には同感できる言葉であった。
私どもは、毎日子どもと共に教室で勉強をしている。最近、「勉強の意欲」ということが頻繁に言われる。しかし、そのようなことが子どもに説明されたとしても、それですぐ意欲が出ると言うわけでもない。勉強をしていて心底面白いと感じなければ駄目なのである。
学校に来たら、子どもも、先生も、共に元気が出る勉強。これを工夫したいと思う。
全国の先生方は夏休みや冬休み中などにも勉強会に出て沢山勉強している。
私もその幾つかに参加する。時には、年末・年始の研究会もある。そんな研究会に出ると、先生方はどこでも一生懸命である。
今、新聞やテレビで教育に関心が高く、いろいろ考えさせられるが、真摯に目の前の子どもをよく見て、日々の学習を進めていくことが何よりである。どこでも少人数による授業や習熟度別の授業が算数に限って行われている。他がやるからやるとか、やれと言われるからやるといった類いの授業方法ではなく、それが是非とも必要だからといった説明ができる方法を模索してほしいと思う。