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NO.20
感性

子どもの感性は素晴らしく、ときに大人もビックリするようなことがたくさん起こります。今回は、「感性」についてのお話です。

2005年、ニューヨーク近代美術館にお勤めの鑑賞教育第一人者アメリア・アレナスさんが来日し、子どもたちとのギャラリートークが、東京国立美術館で行われた。
私も子どもたちについて参加した。二時間かけて、二つの彫刻と、三つの絵画の前で、見たこと、感じたこと、考えたことを子どもが自由に話す。それに応えてアメリアさんが話をする。
30人の子どもが何を言うかは全くわからない。
しかし、そこでどんなことを言ったとしても、まず受け入れ、そのことをきっかけに美術の中身について話す。アメリアさんが全く思ってもいないことを話す子どももいる。たとえ予想していたことでも、子どもは全く別の切り口から話してくる。それでも動じずに話をしている。
赤ん坊の影が二重になって揺らいでいるような絵があった。かわいい赤ん坊が手を上げてよちよち歩いているように見える。それは多くの子の感想でもある。だが、一人の男の子が「なんだかボクシングをしているみたいだ」と言った。愉快な発想だと思う。アメリアさんも「私が想像していなかった面白い発想だ」と言って褒めた。
そして、「絵は、見る人の鑑である」と言う。
絵を見るのに、この絵は、誰がいつごろ描いて、どんな絵の具を使ったかなどという事前の知識は全く必要ない。絵を見る人が自分で感じたことが大切。その人がどう見るかということは、絵が鑑になって、そこに現れるのだと言う。
見たままの感じを素直に表現する子どもたちの言葉を聞いていると、まことに多種多様で、その子の心の中が読み取れるような気もした。見た絵や彫刻がどう見えるかは、その人の感性によって違って当然なのだ。
その感性に応じて、子どもたちの鑑賞眼を豊かなものにしていこうとするこのギャラリートークは、知識の伝達から始まる解説とは逆の、まさしく子どもの感性に培う教育ではないかと感じたのである。