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NO.23
私の授業観

今回は、卒業を迎えた子どもへのメッセージをご紹介します。坪田先生の熱い思いが感じられます。(1989年 卒業文集「平成の子」より)

三年間みなさんを担任し、楽しく授業を繰り返してきました。きらきらした目をして、授業中に真剣に話し合う姿が、深く印象に残っています。
 そこでこの卒業文集の一頁を拝借して、私の授業観を書いておこうと思います。
 大事なことは三つあります。
 第一は、「自分で考える」ことです。
 あたりまえのことのようですが、なかなか難しいことです。裏を返せば、授業の中で、他人の考えたこと、先生のまとめをいつももらってばかりいてはだめだということになります。私は、みなさんが受け身になるような授業にしたくなかったのです。
 何が問題となっているのか、それがわかったら、まず自分なりの考えをノートに書いてみる。書くことによって自分の考えがまとまる。そして、自分の考えをもとにして、他人と意見を出し合い、修正していく。そんな積極的な態度をいつも望んでいました。
 第二は、「人によって考え方が違う」ことを知ることです。
 三十九人で勉強をしているのです。大勢で勉強することにはよさがあります。それは、いろいろな考え方があるのだなあ、ということがわかることなのです。
 いっしょに同じ問題の解決に向って努力するとき、必ず意見がぶつかります。そんな時それぞれの意見の長所・短所を見つけ、それを認めていく。そこが大切なのです。我を通してはそれができません。結局、発展のないまま終わってしまうことになります。
 大きいことを言えば、人は一人では生きていけません。人と自分の違いを意識し、相手を認める心を持たなければよりよい生き方ができないのです。授業でもこれは同じことだと思っています。
 友達の喜びを自分でも喜べる。友達の悲しみをいっしょに悲しめる、ということにもつながるでしょう。
 第三に、「答えは一つではない」と意識できることです。
 算数の勉強では、正解が唯一に決まっていると思っている人が多いようです。しかし、そうでもない問題も多いはずです。「3+5は」と聞けば、答えは一つですが、逆に「8は何+何」と問えば、一つしか答えられない人は、考えのせまい人となってしまいます。
 柔軟な考えができるように望んで、教科書にない問題も数多くやってきました。
 世の中の問題には、決まりきった答えがあるなどということは、本当に少なく、多くは、未解決であり、答えがいく通りにも考えられるものばかりです。
 みなさんには、やりがいのある未来が待っているのです。
 あと十年もすれば二十一世紀です。これから先、いくつもの難問がひかえていることでしょう。それにたち向って強く生きていって下さい。
 私は授業の中で、少しでもそんな力のたしになればと思って努力してきました。大人になって台形の面積の公式、円の面積の公式などは、忘れてしまうかもしれません。しかし、それを自分の力で考え出した、その力、つまり「自分で創造する力」はきっと残っているだろうと信じています。

 教わることを待たず、自らを学びとる、創り出すそんな気持ちを忘れずに。