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NO.24
問題から問題へ

数学者 秋山仁先生の著書から共感された、算数・数学の面白さ、楽しさをご紹介しています。

 秋山仁氏の『知性の織りなす数学美――定理づくりの実況中継』(中公新書)を非常に楽しく拝読した。著者から贈られた本である。
 秋山先生は、テレビでよく見るあの風貌とは全く異なって非常に繊細な心の持ち主であり、また、日本の教育の将来を真剣に考えられている方である。
 この本の中には、一つの問題をどこまでも発展させながら、その問題の一般化をはかろうと追究している過程そのものが沢山盛り込まれている。
 なかでも私が気に入ったのは、「チョコレートケーキの等分割問題」である。
「円柱状のケーキには、チョコレートが塗られている。ただし底には塗られていない。このケーキを公平に三等分する。どのように切ったらよいか」
 こんな問題は、小学生でもできる。上底と側面に塗られたチョコレートと、中のスポンジがどちらも等分されていることが条件である。
 つまるところ、この場合、底面の中心角を等分すればいいのである。そうすれば、側面積も体積も等分される。
 次に、このケーキの底面が「もしも、正方形であったらどうか」と考えてみると、事情は少々変わってくる。よく考えてみると、今度は中心角の等分割では駄目だということがわかる。そこで、底面と側面の面積を同時に等分する方法を考えなくてはならない。結論だけ言えば、今度は、底面の周の長さを等分すればいい。三角形の面積を考えて、等積変形の考えが使える。小学生に考えさせる問題としては、このあたりまでだろうが、秋山先生のこの本では、まだまだ先がある。興味が尽きない。
 今度は、底面の形が「長方形になったら」どうか、と考えている。これまた、面白い解き方がなされる。
 さらに「台形になったら」「一般多角形では」……と追究の目は突き進むのである。
 この本に紹介されている問題の例は、いずれもハンズオンの精神で、構造を見抜く具体的な展開がなされ、その一般化を求める追究の様子が紹介されている。
 算数・数学の最も質の高い面白さを味わう精神に充ち満ちている。
 このような精神が「教材を見る眼を鍛える」のであって、具体的な「問題から問題へ」の発展の過程が楽しいのである。教師も子どもも、算数授業の中でこの楽しさを味わいたいものである。