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学習公開・研究発表会
研数学館の算数・数学連続セミナー第1回
「学力テストをいかに授業に活かすか」
4.盛山隆雄先生の研究授業から学ぶ

後半は、今日の盛山先生の研究授業を、現場の授業者の仲間として振り返り、授業を見る目や授業をする力はこういうところに潜んでいるのではないかということをお話します。
1)問題のあり方

まず、最初に問題のあり方です。これは授業をやる方には、「最初は何て書こうかな、最初に何て言おうかな」という最大のヤマ場です。最初の一手というのは大事です。今日の授業は、2桁÷1桁の式18個をカードで提示して、「あまりが8の式を見つけましょう」という問題でした。
点Cを作図

問題のあり方については、語尾を見るといいです。問題の語尾の「見つけましょう、説明をしましょう、分けてみましょう、書いてみましょう」というところに、算数の活動そのものが浮かび上がっているのです。すべての教科書には問題が書いてありますから、教科書を洗いざらい見ると、それを見るだけで算数の活動のさせ方というのが分析できるのではないでしょうか。今日の授業は「見つけましょう。どれがそれですか、探してごらんなさい」ということが活動です。このほかに何かを提示して「これは何でしょう」というのがありますね。「何でしょう、どこにあるのでしょう」というのもあります。あるいは「なぜでしょう、書いてみましょう、どうやったら作れますか」という活動を促す語尾などもあります。そういう幾つかの語尾を自分で持っていると、この題材で「比べようということから入ろうか」、「幾つかの中から探させようか」、「同じものを作ってみようと言おうか」など、いろいろな工夫が思いつくのではないかと思います。今日はこのたくさんある中で「見つける、探す」ということを活動の眼目にして授業が展開したわけです。「式をカード化して全部並べてやろう」と、これはひとつの工夫ですね。


2)つぶやきを生かす
今日は非常に面白い授業だなと思いましたが、日本の良い授業とは今日のように、子どもの「つぶやき」を生かしています。指導案に書いた項目だけが頭にあり、授業でやっていくというのではなく、実際には子どもがいろいろと言いますから、「つぶやき」を生かす。以前このセミナーでも申し上げましたが、「つぶやき」というのは、「口へんに玄」という字ですから、旁は「糸」とその上は「蓋」を表しています。糸のようにか細い、自分では明確になっていない、そういうことを口から発する。これが「つぶやき」でしょう。この、本当にまだはっきりしていないものを、子どもが表現したものを明確なものにしていくというのが授業者のあるべき姿ですから、「つぶやき」を生かすというのは良い授業の一つの特長だと思います。導入場面ばかりではありません。盛山先生は45分間、必死にアンテナを張ってやっているわけです。そうではない授業はどこかで先生が気を抜いています。指導案にC1,C2,C3と予想される反応というのが書いてあり、「今からやってみましょう」となると画用紙とマジックを持ち歩く授業というのが多いでしょう。C1が見つかって、「あなたこれを書きなさい、C2、C3。」その先生は、これで授業を展開できると思っています。一時間中、先生が汗をかいていません。やはり良い授業は一時間中、先生がアンテナを張っていてどういうふうに子どもが反応するかを知っていなければいけないと思います。

 

3)机間指導
それから机間指導。三番目に、机間指導をしながら先生が一つ一つに対応するということが大事です。よくある授業では、一人一人のノートを見てささやくようにして指導している、机間指導。昔は机間巡視、最近では机間指導と言っていますが、そういう姿が多いですね。今日の授業で盛山先生は「あ、Kくんはほとんど計算して見つけています。18個の式を写して、素早く計算している子がいます」と大きい声で言っていましたね。あの大きな声で言っているというのは、その子に言っているのではなく実況中継をしているのです。実況中継をするということは、何にも手がつかない子を応援しているわけです。私はこの手法はいいと思います。このような机間指導しながらの対応というのも重要なポイントだと思います。

 

4)「分かち合う」
四番目は、今日の授業でも見られましたが、子ども同士のヒントの提示です。子どもにヒントを出させるというのは、一つのものを「分かち合う」授業になります。自分だけがわかればいいというのではなく、一緒につくる授業の中で一つのものをみんなで「分かち合う」。私はこの言葉はなかなかいいと思い、今後講演をするときにはキーワードにしようと思っているのです。


5)答えの発表の場
五番目に、答えの発表の場。今日の授業では、この答えの発表の場は一つではありません。算数の問いかけに対して答えがひとつではない。こういう設定を「オープンエンデッド」な設定と言います。この設定は、いろいろな子どもを誉めてあげることができるのです。だから答えがひとつになる問題を提示したとしても、途中の段階でたくさんの子どもが活躍できるように仕組むということがあるといいと思います。今日の授業でも、あまりが8の式はたくさん出てきます。一人の子がこれだと言っても他の子が言うチャンスがある。このように、誉める子どもを増やす一つの方法だと思います。できればこういうものを設定したいですね。

 

6)反復(スパイラル)
今日は答えが三つ出たところで盛山先生が「確かめは?」と聞かれました。確かめ算をやりましたね。これは六番目に言いたいことで、授業の時、途中でも復習をするということです。この間の中教審のまとめに、「反復(スパイラル)による教育課程の編成をします」とありました。今度の学習指導要領では、一年生の内容、二年生の内容が電車の連結器で繋がっているようには書かれず、紙を糊でくっつけるような、糊しろ的に同じものがまた出てくるというような教育課程の編成をしますということを訴えている。私は、学年がまたがる教材ばかりではなくて、同じ学年の中でも子どもがなかなかできないものがあれば、授業の中で繰り返しやっていくことが大事だろうと思います。
中教審のまとめからは、反復(スパイラル)の良さを示すような内容が、三つ読み取れました。私は、これを「スパイラルの良さ」だと解釈しています。
一つは「理解の広がりや深まりなど学習の進歩が感じられる」という良さがあります。理解の広がりや深まりなど学習の進歩が、“自分で”感じられるということです。
二番目は「なだらかに発展させられる」という良さがあります。
三番目は「学び直しの機会を設けられる」。
今日の授業は、本当は確かめをやらなくても目的には近づくわけですが、確かめという計算をもう一度振り返って子どもに確認しています。こういうことが授業の中で随所に出てくるというのも大切なのではないかと思います。

 

7)状況への対応
今日の授業では、確かめのあとに「43÷9は、わられる数の43が45二つ違いだから」という意見が出ました。ずーっとうまくいっているところに、ガクッと違う反応が出たわけです。こういう新たな状況が発生することは授業の中で多々あります。自分が思っている筋道から違う方に離れてしまうものにどう対応するかというのは教師の力量です。新たな状況に対応できず研究授業を進めることはよくあります。よくある授業では、最後にこのことはまた明日やりましょうというのが多いのです。明日本当にやるのかなと思う時もよくあります。新たな状況に対応する力というのが教師には大事です。盛山先生の場合はきちんと聞いてやりました。

 

8)軌道修正
八つ目は、新たな自分の筋書きから外れてもまた戻す力が先生にないと、これはだめです。本題に向かって活動を促す方法、それも授業者の持てる力だと思います。盛山先生は「わる数が8よりも大きいところにちょっと目をつけてごらんなさい」ということで始めました。「でも、手前のチームは違うことを話し合っていますね、このチームは別の発見をして喜んでいました。後ほどしゃべってもらいます」と。これは手前のチームの発見が、発展の方に生きてくるということを盛山先生が感づいたからです。このようにきちんと軌道修正をする、そういう力は大事です。

 

9)わかりやすい例示
九番目に、子どもがなかなか伝わりにくい言葉で言ったときには、子どものわかりやすい例を示すこと。今日は、「26÷3=6あまり8」というような例を、盛山先生が一緒になって書いてやりました。こうすることで、発表した子どもが伝えたかった「わる数が8より小さいときは、あまりが8にならない」ことが理解しやすくなるわけです。こういう誤った例なども、子どもが言いたいことをはっきり見えるようにするためには必要です。そのようなことがパッと気転をきかせて出てくるということも大事です。

 

10)表現力の指導
十番目に、子どもの表現力を指導していくということも大事です。いい表現が出てきたらほめるのももちろん大事ですが、「そのことをもう一回いい言葉で言い直してごらんなさい」ということも、ダイレクトに言ってもいいのではないかと思います。たとえば「8でわっているのに、あまり8はおかしいから、あまりは0になる」と子どもが言います。子どもは、いいことを言っているのです。でも、論理的説明にはなっていないと思うのです。わり算のあまりは、最大限わって取れる部分を商にしてあまりを添えるというのは約束事です。自分たちが約束したものに基づいて説明することは三年生でもできます。そのことを約束したことにまで戻るということがあるといいですね。
あるいは「この問題をもう一度見ると、まずはどんなところに目をつければよかったかな?」と盛山先生が聞き、子どもに「わる数に9がある式に目をつければよかった」というふうに言わせました。ここでは、9というよりもたとえば「8より大きい数に目をつければすぐ答えられる」というような、一般化を目指すような方向の言葉に置き換えてやる。こういう端々にも、子どもの表現力を高めていく場というのも見つけてやっていくといいと思います。


11)発展の位置づけ
もう一つ学ぶべきところは、最後のところです。子どもたちの新たな発見、これをきちんと位置づけて授業をされました。要するに一つのことが解決した後にどうやったら子どもがそのことを発展していけるか、今後の課題が何なのか、ということが見えるような授業の終わりを持つと本当に面白いと思った子は家に帰ってやります。次の日、子どもが「先生、昨日の続きでこんなことを考えたのだけど見てみて」とノートを持ってきたら、これぞ最高の評価です。評価というのは、自分の授業が子どもに評価されたという意味です。良い授業であればあるほど子どもは次の日何かをやってきて「昨日のことについて、先生、こんなこと考えたのだけど見てみて」とノートを持ってくる。これは授業が非常に面白かったのだというようなことを子どもが言ってくれているようなものです。こちらから子どもを見るならば、この子どもは非常に前向きに関わっていたという証拠でもあります。

研究授業について10個くらい申し上げましたが、一つの授業をつくるときにそれらのことに思いを馳せて構成すると、良い授業ができるのではないかと思います。そして、校内の研究授業などでも他の先生方も一緒に学べる、良い視点が浮かぶのではないかと思います。



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